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2012年10月1日

持てる者と持たざる者

何ヶ月か前、まだ共和党が大統領指名候補争いをしていた頃、車を運転しながらラジオから誰かが次のような事を言っているのを聞きました。
次のアメリカ大統領選挙の本当の焦点は、イデオロギーの違いでも、中絶問題でも、同性愛問題でも、外交問題でも、経済再建問題でも何でもなく、ただ単に持てる者と持たざる者の争いになる…
その時にはそうかしれないと思って聞いていましたが、いまではそうだと確信しています。1980年頃から、アメリカの中間層の所得は伸び悩み、最近では90年中頃の所得まで落ち込んでいます。失業者も相変わらず多く、不景気が長引けば長引く程持ちこたえられなくなる家庭も増えています。

それに比べて裕福層は、所得を倍増させています。アメリカの最も裕福な1%は、1979年から2011年までに所得を275%増やしています。同時期に中間層の所得の倍増は僅か18%です。

成功した人が評価されて、高い報酬を得る事に対して、アメリカ人はとても寛容なのですが、果してこれほどまで差をつけるべきなのかと思う人が増えています。

富の再分配という考え方さえアメリカ人は嫌います。一生懸命働いた高所得者の報酬を働かない人びとに分配するのは倫理的にも正しくないと考えるからです。でも、過去20年程の間、アメリカでは中間層の富が裕福層に再分配される結果となっています。

今まで雇用されていた会社から解雇された後、同じ会社から契約社員としてのオファーをもらい、今までの半分程の給料で医療保険も付いていないのに、以前と全く同じ仕事をしている人は増えているようです。損だとは分かっていても、それしかオファーがなければ甘んじて受けるしかないのです。

来週に大統領候補の討論があるので、それによって世論が少し動く事はあるとは思いますが、ロムニー候補が「持たざるものの生活を向上させてくれる」とアメリカ国民が感じる確立はかなり低いのではないかと思います。



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2012年9月13日

気になる中国

日本では尖閣諸島の問題もあり、中国との緊張感が高まっていますが、そのニュースにはアメリカも大いに興味を持っています。薄 熙来失脚のニュースほどセンセーショナルな扱いはされていませんが、ワシントンポストやニューヨークタイムスも、中国に関する記事は殆ど毎日掲載しています。

アメリカは中国から目が離せないようです。中国はいまや世界中の製品を生産している工場で、多くの企業から多大な投資が流れ込んでいるにも関わらず、政治の透明性は依然として低いままです。しかも最近の中国共産党は、幹部交代を控えているせいか、以前よりも不安定にも見えます。

中国の日本に対する敵対心の裏には、国内の状況に不満を持ち、将来の生活に不安を感じている国民の行き場のない苛立ちがあるようだとアメリカの新聞は伝えています。どうにかして国民の不満を抑えようと医療保険制度や年金制度なども急速に導入されているようです。尖閣諸島に国民の注意を向けさせるのも、国内の状況から目をそらさせるためです。

アメリカは、国家レベルでも企業レベルでも中国を研究しています。中国を理解し、アメリカの利益を失う事なく、成長する中国とともに繁栄していこうとしています。アメリカはかつて、同様の態度で日本を観察し研究したに違いありません。

アメリカの国力が落ちたというのは紛れもない事実です。アメリカ人でもそれを十分認識している人は、一度失った産業(主に製造業)がアメリカには戻って来ないというのを理解しています。その上で一体どうしたら雇用が産まれるか、どのような教育が雇用を産み出す為に必要なのかを摸索しています。アメリカにとって中国は、その鍵なのだろうと思います。



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2012年8月28日

えっ?スニーカーに $300?


夏休みも終わりに近づき、新学期の為に新しい文房具やバックパックを買い揃える季節です。子供に新しい服を買ってやる親も多く、新学期セールが至る所で見られます。それを狙って各メーカーが新製品や新しいモデルを出す季節でもあります。そしてついに$300台のスニーカーが出たという事で、9月に発売予定の LeBron X Nike Plus というバスケットボールシューズは話題になっています。高いナイキやアディダスのスニーカーでも$200を超える事は稀なので、この不景気の中$300台のスニーカーが発売されるというのは少々ショッキングです。

バスケットボールシューズと言っても、これは本当にバスケットボールをしている人が競技用に履くような代物ではなく、要は街で履くようなおしゃれスニーカーなのですが、金色に輝く特大ナイキロゴの他にもあれこれ機能が付いているようです。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、
The basketball shoes come with built-in electronics that measure how high wearers jump and how far they run. Analysts say they expect Nike to issue a relatively small number—about 50,000—of the $300 shoes, with a less-expensive version of the shoe, without the electronics, likely to cost $180, or $10 more than the previous edition, the LeBron 9.
このバスケットボールシューズは、電子工学技術を用いており、どれだけ高くジャンプしたか、どれだけ遠くまで走ったか分かるようになっています。アナリストによると、ナイキは$300代のスニーカーは5万足程度と比較的少数の発売になるけれど、電子工学技術なしのそれよりも安いバージョンの靴は約$180程度、もしくは一つ前のモデルの LeBron 9 よりも$10高い値段で発売されるだろうと見ています。
と言う事なのですが、機能を読んでも分かるように、これは子供やティーン用のスニーカーです。しかも販売ターゲットは明らかに黒人です。写真を見る限りでは歩くと底が電気で光るようになっているようで、まさかいい大人が歩く度にピカピカ光るスニーカーを$300も出して喜んで履くとは思えません。

スニーカー(靴)にお金をかけるというのは、ヒップホップ系の文化です。例え貧乏でも、スニーカーだけはピカピカなのが誇りなのだそうです。以前コメディアンが「ニューヨークに始めて来た頃は、ハーレムやブロンクスに行くと黒人が多くて怖いと思ったんだけど、黒人の友達も出来てその文化も少し分かるようになると、スニーカーで見分けられるというのが分かったね。汚い格好をしても綺麗なスニーカーを履いてる奴は安心だけど、スニーカーまでボロボロの奴は本当に危ない。」と言って笑いを取っていた事を思い出します。

GlobalGrind というヒップホップ系のサイトにも、ナイキの$300スニーカーに関する面白い記事がありました。グッチやルイ・ヴィトンの靴に$500も支払う用意があるならば、スポーツシューズに$300支払ってもいいのではないか、というのがナイキ側にはあるようです。ナイキは、$300でスニーカーが本当に売れるのかどうか、市場を試しているのであって、特殊技術にお金がかかるとか工賃が上がっているとかというのは言いわけに過ぎなのだそうです。もしも売れなければ、ナイキも他のメーカーも$300台のスニーカーはしばらく発売しないのでしょう。ところが記事のライターは、おそらく$300のスニーカーは、より高価で希少な物に引きつけられる子供達とそれを買ってやる親達に飛ぶように売れて、更に高いスニーカーの前例を作るだろうと予測しています。

つまり、この記録的な不景気の中、裕福でもない黒人層の子供を狙って高額なスニーカーを売り莫大な儲けを得ようとしているナイキのやり方はひんしゅくを買って当然だけれど、需要があるからこそ供給も産まれるのだと GlobalGrind の記事は締めくくっていました。

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2012年8月21日

アメリカの新聞

白状すると、日本では殆ど新聞を読んだ事がありませんでした。読みにくいと感じていたし、例え読んでも分かり辛かったからです。ところが、アメリカに来てから新聞を頻繁に読むようになりました。はっきり言って、日本の新聞よりも遥かに読みやすいし、面白いのです。新聞と言っても紙に印刷されたものではなく、ネットでの電子版の閲覧です。ページをめくって読みたい所を探さなければならない新聞紙と比べて、ネットではクリックすればその記事に飛んで行けるので便利だし、家に新聞紙が積み重なってイライラする事もありません。記事の内容も、質も、ボリュームも日本の新聞に比べてアメリカの新聞は遥かに優れていると思います。

アメリカの新聞は、日本と異なり全国版ではなく(USA Today という薄い内容の全国版の新聞がありますが、ホテルの部屋に毎朝デリバリーされる意外に読んでいる人を見た事がありません。)、それぞれの地方都市にそれぞれの新聞があるので、内容にもその土地の特徴が色濃く出ます。私が普段読んでいるのは、ニューヨークタイムスワシントンポストです。

ニューヨークタイムスの読者には都市部に住む高学歴のリベラル層が多いために、内容もリベラルです。新聞のカバーする内容の範囲も、政治、経済、教育、不動産、ファッション、映画、美術、等々とかなり広く、記事の量も質も大変高いものとなっています。また、読者の知識や教育レベルの高さは電子版のコメントを見ると明らかです。

ワシントンポストは、首都ワシントンD.C.を中心に出回っている保守系の新聞ですが、首都の新聞だけに全国的な読者が多い新聞でもあります。新聞の購読をしなくても電子版が全く無料で読めるのがワシントンポストの素晴らしいところです。コラム欄には、どのコラムが保守の見解か、またはリベラルの見解か、はっきりと振り分けられているので、アメリカの政治にあまり詳しくない人が読んでもどれが保守的な考え方なのか、若しくはリベラルな考え方なのか、分かりやすくなっています。読者の質はニューヨークタイムスよりも劣るようで、電子版のコメントには、一行のみの誹りも見られます。

それともう一つ、新聞ではないのですが、エコノミストをたまにかいつまんで読みます。エコノミストは、イギリスの保守的な週刊誌ですが、記事の内容が深く掘り下げられており、アメリカからではなくイギリスからの物の見方を知る事ができ、アメリカの新聞からはあまり知る事ができない世界の事も詳しく書いてあります。ただ、アメリカに関する記事は的外れの内容だったりする事がたまにあります。

日本の新聞の記事は、一つの話題に関する何処の新聞社の記事を見ても、とても短く判を押したように同様である事が多いように思います。それがよく言われる日本記者クラブの産物なのかなと思うと、日本の新聞からまともな情報を得るのは難しいような気がして、海外に住む私には残念でなりません。



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2012年7月15日

メリトクラシー (meritocracy)

ここ数日、メリトクラシーという言葉がアメリカメディアのキーワードになっています。言葉自体は、最近造語された物ではなく、1958年に出版されたイギリスの社会学者マイケル・ヤングの著書 『The Rise of Meritocracy』によって始めて使われたそうです。ウィキによると日本では能力主義と訳されているようですが、アメリカでは少々異なる意味合いを含んでいるように思えます。

なぜメリトクラシーがアメリカで今話題になっているのかと言えば、拡大し続ける貧富の差、融通性に欠けた階級社会、既得階級の利権の独占などが大きな問題となっているからです。アメリカン・ドリームは既に過去のものであり、本来ならば階級社会であるフランスの方が社会階級間の移動が容易だといういくつかの研究結果さえでています。

貧富の差は、既に子供の頃から受けられる教育の差として顕著に現れているという記事が今年2月のニューヨークタイムスにありました。過去数十年の間にアメリカでの人種間における教育の格差は大きく改善されたものの、収入による教育の格差は広がる一方だというのです。裕福な家庭は、子供を少人数制クラスの私立学校に入れたり、ピアノやスポーツなどの様々な習い事に行かせるだけの経済的余裕を持ち、子供と一緒に過ごす時間も比較的多く取れます。一方貧しい家庭の子供は1クラスに沢山の子供がいる公立の学校に通い、お金のかかる習い事などに通う事も容易ではありません。親は生活を支える為に仕事を掛け持ちしている事も多いので、子供と過ごす時間も簡単には作れません。そしてその生活レベルの差が子供の学力や可能性の差となり、さらなる貧富の差を産み出すという構図です。

本来ならば、実力があれば成功できるように作られた社会の仕組みが、すでに成功した人々が自分の現在持つ権利を更に拡大し、その上かつて自分達が登ったハシゴを外す事によって決定的にしようと試みているのが現在のアメリカの姿であると見ている人は少なくありません。政治家も選挙戦を勝ち抜くための多額の政治献金を得る為に、一部の特権階級と結びつき、そして特権階級はその政治家からの見返りを期待します。もはや、政治は一般の国民のためにあるものではなくなりつつあります。

将来のアメリカは、一部の特権階級が大多数の貧しい市民を支配するような国になってしまうのか、今から5年後にはその答えが既に出ているはずです。



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2012年5月3日

日米の経済

先日、日米首相会談がホワイトハウスでしめやかに行われたようです。最近5年間で6人目の首相ということで、アメリカ政府も野田首相がいつまでもつのか皆目見当がつかないようで、いま重要な交渉をしても半年後に首相が交代したら、全てが振り出しに戻る可能性もあり困惑していると各メディアは伝えています。

ラジオを聞いていたら、かなり興味深い日本に関するレポートがあったので、ついつい聞き入ってしまいました。Japan: Over the hill? というタイトルはつけられていたものの、レポートの内容は日本の経済はなかなか健全であるというものです。日本はGDPこそ下がりましたが、一人当たりのGDPは下がっておらず、実際に日本人の生活を見る限り、困窮しているようには見えないと説明していました。私も日本からのニュースを見る限り、あれこれと物を買う多くの日本人の生活には余裕さえ見られると思っています。貧困家庭が急増しているアメリカとは大違いです。

ラジオのショーではその理由を、経済のシステムにあげていました。日本の経済のシステムは規制が沢山あり、アメリカのように規制をことごとく取り払った経済とは対局にあります。そのために西欧諸国は日本の経済を常々快く思っておらず、その成功を認めたくないのだと言っていました。

興味深い事に、現在西欧諸国が抱えている不況は、本来必要であった規制まで取り払ってしまった結果、引き起こされたものです。アメリカでは、更に規制を取り払うべきだと主張する政治家がまだ沢山いるのは驚くべき事実ですが、規制というのは経済の健全な成長には必要なものなのだとやっと理解できたアメリカ人もいるはずです。もしかしたら、これから日本式の経済が世界で注目を浴びるようになるのかも知れません。

日本人のなかには、日本はアメリカの子分で全て言う事を聞いていると思う人もいると思います。でも実際にアメリカに住んで、その政治経済を目の当たりにすると、アメリカは思い通りにならない日本に対して歯ぎしりをしているのが見えます。1940年代50年代にはかなり強かったアメリカの影響力も、今ではかなり薄いのです。中東も、イラクも、アフガニスタンも、アメリカが当初思い描いたようには事が運んでいません。

貿易交渉になると、いつも規制を撤廃しろと詰め寄るアメリカになかなか話を合わせない日本。牛肉をもっと日本に輸出しようとしても、アメリカ産の牛肉を嫌う日本人。異なる文化が交流するのですから、そこで様々な問題が持ち上がるのは当然なのです。



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2012年4月21日

シティー・グループの株主総会

先日、シティー・バンク等の親会社であるシティー・グループの株主総会で、CEOを含める会社役員の報酬が否決されたというニュースがありました。大統領選挙やアフガニスタンでのアメリカ軍の更なる不始末など、様々な重要なニュースがありますが、これも結構重要なニュースだと思うので、ちょっと触れておきます。

株主総会ではこれからの会社の方針などの承認のために必ず投票が行われますが、役員の報酬が否定される事はまずないそうで、このような事態はかなり珍しいケースなのだそうです。事前の根回しも行われるようだし、会社がよく運営されていれば、配当も増えるので、それなりの報酬を役員に支払う事に株主はなんら異存はないのです。たとえ多くの社員を解雇しても、会社の利潤が増えればそれで良いという事です。

ところがシティー・グループはずさんな経営の為に数年前に大きな損失を出し、2008年には倒産を免れるために国が多額の資金を注入した銀行です。その記憶もまだ生々しく、充分な結果も出ていないのに、早々とCEOに対する$15Mもの報酬を出すとは納得できないと株主が意見したのです。株主総会の決定には強制能力はないものの、株主は事実上の会社の持ち主なので、経営者側が決定を全く無視する事も考えにくいのだそうです。

アメリカの株式は、裕福な個人や会社が大口の株主になっている事もありますが、退職金を運営する団体が小さな個人の株主をまとめて代表しているケースが沢山あります。今回は、カリフォルニア州教師の退職金を運営する団体が多額のCEOの報酬に意義を唱えたのが発端だったそうです。

これから、株主総会シーズンで、バンク・オブ・アメリカやウェルス・ファーゴの役員報酬も否決される可能性も出て来たようです。これで今までのような役員報酬だけ桁違いに伸びるようなやり方には、歯止めがかかるのではないかと言われています。



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2012年4月13日

電子書籍の談合訴訟和解

日本では、電子書籍の数自体がまだまだ少ないようですが、アメリカでは殆どとは言えないまでも、かなり多くの本が電子書籍として発売されており、私を含め既に利用している人は多いと思います。電子書籍は、もう10年位存在しているようですが、一般的になったのは2年程前にアマゾンがキンドルという電子書籍専門の端末を販売しだしてからです。その後、Kobo、Apple、Barnes and Noble (Nook) 等の様々な会社が市場に参入し、電子書籍はさらに一般化して行きました。

電子書籍自体は端末がないと読めない為に、最初に$100以上する端末を購入する必用がありますが、端末さえあれば、実際の本よりも格安の電子書籍を買う事ができるし、家が本でかさばる事もありません。

今日 class action law suit(複雑訴訟形態)という形をとり、アップルと5つの出版社が価格談合の疑いで民事訴訟されました。もともと電子書籍の小売り価格の設定は小売業者が行っていたのですが、アップルが市場に参入してからは、出版社が小売価格を設定するようになり、小売業者が自由に価格設定をできなくなったのだそうです。その裏には、アップルがiPadの発売に合わせ、それまで殆どアマゾンの独占状態にあった電子書籍のシェアを獲得する為に出版社に働きかけたのではないか(談合)という疑いがあります。出版社が電子書籍の価格を設定する事により、価格による市場競争がなくなれば、アップルの電子書籍の販売が容易になるからです。

数時間もたたないうちに、被告の5つの出版社のうちの3社は、既に和解に応じる声明を出しました。さらにその数時間後には、アマゾンが電子書籍の値段を下げるという声明も発表しています。より安く本が読めるようになるというのは、消費者としては喜ばしい事ですが、出版業界及び本のあり方が近い将来さらに大きく変わって行く事になりそうです。

アメリカの出版業界や書籍小売業者は、30年前と比べて既に大きく異なっています。それまでは、各地に点在していた独立した書店が今では大手の Barnes and Noble という本のチェーン店にとって変わっています。Barnes and Noble は、独立した書店よりも品揃えが良いのと広い店内にスターバックスを置いているために集客能力が高く、コーヒーを飲みながら座って本を読めるため、より長く客を店内に留めておくことで大いに成功しました。ところが Barnes and Noble は、電子書籍の販売では少々出遅れ、今では Nook という端末を販売しているものの、シェアはあまり大きくないようです。

これから電子書籍がさらに一般的になると、書店が姿を消すのではないかという懸念を持つ人もいるようです。今まで小さな書店を駆逐し続けた Barnes and Noble も今度はアマゾンに駆逐される日が来るのかも知れません。

本当に本屋が無くなるのかどうかは、私には予測しかねますが、このような経済の変化は恒常的なもので、良い悪いに関わらず決して止める事のできない流れだと思います。技術が進み新しい何かが出て来る度に、古いものは徐々に姿を消して行くものなのでしょう。インターネットに代わる媒体が近い将来出て来たとしても、全く驚くに値しません。

町工場への大手企業からの発注が全て中国へ流れてしまったり、会社がそれまでの従業員を解雇してあらたに契約社員ばかりを雇うようになったのも全て同様の事が違う業界で起っているだけです。生活が便利になった、物が安くなったと喜んでいると、今度は自分の足元をすくわれてしまうのです。

だからと言って、田舎で農業を始めて自給自足の生活に入ろうという気持ちはありません。農業も魅力的ではありますが、私の天職ではなさそうです。ただ、自分の回りや世界で何が起きているのかを知り、どうやったらこれからの世の中を生き残る事ができるのかを考えるのは、かつてないほど大切になってきたと思います。



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2012年3月5日

アメリカ大統領選挙の争点

ちょっと固そうな題名を付けましたが、専門的な事ではなくてかなり一般的な内容です。アメリカの今回の大統領選挙は、経済問題で始まり経済問題で終わるはずだと思っていました。勿論、イランやシリアの緊迫した状況やイラク、アフガニスタンも考慮に入れれば、軍事の話題が経済の話題に取って代わる事もあり得ます。

ところが、今共和党の大統領候補者選挙で盛り上がっているのは、経済や軍事の云々ではなく、女性の避妊に関する問題なのです。私も女性だし、避妊や中絶問題に関しては、沢山言いたい事はあります。でも、アメリカの大統領に立候補しようとしている人々が、現在のアメリカの惨憺たる経済状況とキューバ危機以来の緊迫した国際状況を一番の争点として扱わず、避妊が正しいとか正しくないとかあれこれ言いあっているのは、全く恐ろしい限りです。



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2012年3月2日

先を走る日本

日本とアメリカは全く別の国なのですが、最近日本はアメリカの先を走っていると思う事がよくあります。例を出せば、高齢化と教育費の高騰と経済不況。どちらもあまり喜ばしい事ではありませんが、この件に関して日本は確実に世界のトップを走っており、アメリカも日本がとった(とっている)対策を研究しているようです。

日本のぬかるみのようにいまいち抜けきれない不況は一種独特ですが、日本はアメリカの銀行が怪しい証券等を売りまくっていた間に既に不況の真っただ中で、充分な資金がなかった為に、ヨーロッパ各国のような被害者にならずに済んでいます。この不幸中の幸いのおかげで、日本は一足早く回復の道を歩んでいます。

教育費の高騰も、日本ではなじみ深い問題ですが、アメリカでは新しい問題です。1993年に私がニューヨーク市立のクイーンズカレッジに入学した時には、州外の生徒や外国人の1学期の学費は $1,600 位だったと記憶しています(州内の生徒はその半額)。今学期の学費をネットで調べたら、州内の生徒で $2,565 という事で、インフレ率を考慮したとしてもその高騰ぶりに驚きました。それでもまだニューヨーク市立の大学は学費がかなり安い方で、私立のNYUの今学期の学費は $20,000 にもなります。普通の家庭では支払いきれませんね。

日本では既に前人未到の域に達している高齢化問題も、アメリカでは最近いろいろと騒がれるようになりました。赤字の年金システムに加え、ベビーブーマーが大量に退職する時代を迎えるので、医療と年金をどうするのか、新しい道を摸索しているようです。アメリカでは、成人した親子が同居するというのは、今の不況が始まるまであまりなかったので、子どもが同居の親の面倒を自宅で見るというのも稀なケースでした。多くの老人は、自力で生活ができなくなると、それまで住んでいた家を売り払い、その資金で老人ホームのような所に移るというのが一般的だったと思います。

ただ日本と同様に、大量の高齢者を全て施設に収容するのは無理なので、アメリカもフルタイムのデイケア付きの自宅介護という事になって行きそうです。今の所は、新聞等でも自宅介護の素晴らしさばかりが描かれている記事が目立ちますが、これが将来どうなるのか、自分の将来も考えあわせると気になる所です。



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2012年2月9日

スーパーボールのクライスラーCM

アメリカスポーツの最大のイベントであるスーパーボールが先週の日曜日にありました。私はアメリカンフットボールのルールも知らないので、ゲームについての発言は一切できません。我が家では、地元チームのニューヨークジャイアンツが出るという事もあって、夫と息子はテレビにかじりついていました。

スーパーボールの話題は、ゲームだけでなく、ハーフタイムショーやテレビコマーシャルにまで及びます。そのなかでも、物議を集めたのが、クライスラーがハーフタイムに使ったCMでした。クリント・イーストウッドが、しわがれた声で2分間の長いCMを淡々とナレーションしています。
ハーフタイムだ
ロッカールームにいるそれぞれのチームは、後半をどう戦うか話し合っている 
アメリカも今がハーフタイムだ
人々は、失業し傷ついている
挽回するにはどうしたら良いか、考えている
そして、我々はみな恐れている
これはゲームじゃないんだ 
デトロイトの人々には、こういう事がわかっている
彼らは殆ど全てを失いかけた
でも、どうにか持ちこたえて、車の街は又戦っている 
たくさんの苦しい時代を見て来た
たくさんの下落があった
お互いに理解できない時もあった
一時は心を失ったかのように思えた
分離、不一致、そして非難が先を見えにくくしていた 
でもその試練の後、正しい事の元に集まり、一つになった
何故なら、それが我々のやり方だからだ
苦しい時を生き残る方法を探し
もしもそれが見つからない場合には
自分達で方法を作った 
いま大切なのは、なにが先にあるかだ
どうやって、後ろの方から出て行くか
どうやって、結束するか
そして、どうやって勝つか 
デトロイトは、それができると我々に示している
彼らに当てはまる事は、我々にも当てはまる 
この国は、一回のパンチでは倒れない
我々は、もう一度起き上がる
そしてその時に、世界は我々のエンジンの轟をもう一度聞く事になる 
そうだ、アメリカもハーフタイムだ
後半戦が始まろうとしている 
この、アメリカの愛国精神に満ちたようなCMは、共和党側から「オバマ大統領の選挙事務所からの宣伝のように見える」という事で、物議を醸し出しました。要するに、デトロイトの復活を宣伝する事は、アメリカの車業界の再編成を指示したオバマ大統領の業績の自画自賛ではないのか、という意味です。

でも、年老いたタフなイメージのクリント・イーストウッドは、アメリカ人が考えるアメリカのイメージと重複するのでしょう。このCMは、多くのアメリカ人の心に響いたようです。



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2012年1月27日

中間層の消滅

21日付けのニューヨークタイムスに、How the U.S. Lost Out on iPhone Work という記事と今日の Average Is Over という記事は心にずっしりと重く響きました。最初の記事には、アップルは2002年頃までは、アメリカ国内で一体型のiMacを製造して "Made in the U.S.A." が売りの一つでもあったのに、現在ではiPhoneを含めた全てのアップル製品は中国などで作られています。どうしてそのような結果になったのか、という経緯がよく描かれています。

アップルが海外に生産拠点を移したのは比較的最近の事で、その分野では決して先駆者とは言えません。PCやテレビ、家電のメーカーは、もっと以前からアジアや南米での生産をしていました。工場の生産ラインは、沢山の技術者や工員を雇う大口の雇用者なので、それが海外へ移れば、当然失業者は増えるわけです。中国人はアメリカ人よりも遥かに安い値段で長時間働き、工場の隣の宿舎で寝起きし、そしてさらに企業がまさに必用としている技術を持っているのだそうです。

でも、これは何も工場などの第二次産業のみに言える事ではなく、同じ現象は第三次産業にまで既に及んでいます。ウェブサイトの制作やデザインを東欧や南米の労働力が安い地域で行うというのは、数年前から私も知っているし、カスタマーサービスも殆どがインド、フィリピン、パナマ等にあってアメリカ人が電話の向こうで答えるというのは今では稀です。様々な事務的な仕事もコンピューターが処理するようになったので、人員削減をしてより少ない安い労働力で今までと同じ事ができるようになりました。

記事にあった極めつけの挿話は、ウェイトレスの代わりに注文をとるiPadのような端末です。各テーブルに置いてあるタブレットには、メニューやカロリー、栄養分、値段が表示されるようになっており、注文も会計もそこからできるそうです。タブレットはウェイトレスのように注文を間違える事もないし、給料もチップもいらない。レストランには料理を作る人とバスボーイが数人いれば良いだけなので、経費もかなり節約できます。

要するに、そこそこの平均的な人間では、今のアメリカで仕事がないということなのです。ずば抜けて優秀であるとか、経営者であるとか、作家や芸術家のように他の人が代行不可能な個人的な特技や技術がある人以外は、失業してしまう可能性が高いのです。かつては、一つの産業が衰退しても、別の産業が台頭して来ていたので、うまい具合に失業者がすくいあげられていましたが、今回はその気配すらありません。

これが、Occupy Wall Street が始まったもう一つの側面なのだろうと思います。なぜ不況になったか、銀行の無謀なビジネスは、今回の不況の幕開けですが、金融業界を直せば景気が元にもどるというわけではないということをアメリカ人は感じています。



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2012年1月26日

一般教書演説 (State of the Union Address)

昨晩の9時からオバマ大統領の一般教書演説がありました。我が家では、子どもが途中で水を飲みたいと言って途中で起きて来るなどの中断がありましたが、大体は見る事ができました。

バラク・オバマという人は、演説をさせれば右に出る者がいないくらい上手です。演説のうまさで頭角を現し、大統領になったと言っても過言ではないと思います。昨日の演説は、少々ゲキの飛ばし過ぎだとも思いましたが、どん底状態にある今のアメリカにはそれが必用です。

オバマ大統領の昨日で発表したように全てが執り行われれば、数年のうちにアメリカの経済力は回復して、教育レベルを向上する大きな足がかりができるはずです。ただ当然ながら、全てが大統領の思い通りになるわけではなく、昨日の演説内容の半分位の懸案が法案化される為には、議会での可決承認が必用です。残念ながら、現在の下院でそれが可能だとは思えません。

私のように長い間累進課税に親しんだ日本人に言わせれば、年間$1Million以上の収入がある人が年収$50,000よりも高い税率を課せられるというのは当然の事のように思えます。ところが、現在のアメリカの税法では、年収が$250,000以下の人々の平均課税率は30%なのに対して、$1Million以上の人々は収入の15%以下の税金しか支払っていない事が通常です。何故このような不思議なシステムになっているかと言うと、$1Million以上の収入のある人の収入の内訳の殆どが給料ではなく投資による収入だからです。アメリカでは投資を助長する為に投資に対する税率を意図的に低くしてあるのです。

アメリカ人の多くは、定年退職後の収入を国からの年金と個人レベルでの投資収入でまかなっている為に、投資の税率が高くすると年金生活者の生活を圧迫してしまうという懸念があります。ただ、殆どのアメリカ人、Occupy Wall Street の人々が言うところの99%のアメリカ人の投資収入は微々たるもので、その総額が$1Million近くになる事はありません。それ故に、収入の内訳がどのようなものであれ、特別に生活に余裕がある人(年間収入が$1Million以上の人)には30%の税金を支払ってもらうという事にしてもいいのではないかと思います。

ただ、資産家にもいろいろあるようで、ウォーレン・バフェットのような人は、自分のような億万長者はそれなりの高い課税率を課せられるべきだと公言しているのに対し、共和党のエリック・カンターに代表されるような人々は、資産家への高い課税はアメリカ経済を圧迫すると言っています。

税金は、必ずどこからか集めなければなりません。不況で税収が自然減している時に、さらなる減税をすれば、さらに国の財政は圧迫されるのみです。国の財政を引き締める為に、教育やその他の支出を極限まで削っているのが現在のアメリカです。



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2011年11月26日

ブラック・フライデー

今年のブラックフライデーは、ウォールマートに始まりウォールマートに終わったという感があります。昨日はウォールマートの広告に拳銃とライフルが載っていたと思い驚いていたら、今日のニュースでは9件のウォールマートでブラックフライデーにまつわる傷害事件が起きたと報道されていました。

LAでは、いち早く目玉商品のXboxを獲得しようとした女性買い物客が他の買い物客に向かって唐辛子スプレーを吹き付けたそうです。他のウォールマートでは、商品争奪戦にスタンガンを使った客、買い物が終わって帰路についた客を襲った強盗もあったそうです。どれも数ドルから十数ドルほどの値下げにまつわる事件で、しかも全てがウォールマートで起っているのだから凄いです。

ニューヨーク市には、ターゲットやKマートはあるのに、ウォールマートはありません。私の記憶が正しければ、何度かウォールマートがニューヨーク市に店舗をオープンしようとした事はあったと思いますが、いずれの時も反対運動が起きて実現しませんでした。ウォールマートは、正社員を採用せず、最低賃金のパートを使い、医療保険等も一切支給しないので有名です。そのような雇用システムに疑問を持つ人がニューヨーク市には沢山いるのです。

私はネットでショッピングをする事が多いのですが、品物検索をすると稀にウォールマートの商品が引っかかって来る事があります。確かに、品質は少々劣るかも知れませんが、値段は安いです。同じ商品が他よりも安く売っているのを見ると、私もウォールマートから物を買おうかどうか迷う事があります。それでも、未だにウォールマートからは一度も買物をした事がないのは、やはり会社の経営方針に嫌悪感を感じるからです。ウォールマートで買い物して、ウォールマートで働くと、さらに貧乏になって行くという因果関係があります。

ウォールマートは、創設者の遺族が株の多くを今でも所有している珍しい会社でもあります。創始者の遺族は、まさにアメリカの1%の裕福層に属する人々で、ついこの前も創始者の娘が新しく美術館を創設したというニュースを見ました。今が第二の Guilded Age と呼ばれる所以です。



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2011年11月2日

庶民の怒り

アメリカにはNetflixという、映画のストリーミング配信と郵便によるDVDレンタルを行っている会社があります。私もそこの会員です。今年の夏頃、今まで一つのサービスだったストリーミング配信とレンタルを分けて別会社、別料金にするという告知がありました。値段も今までの倍近くなります。

会員は、怒ってNetflixをボイコットし始めました。わたしは、DVDレンタルをあきらめ、ストリーミング配信のみの会員に変更しました。それでも、Netflixはやって行けると読んだのでしょう。社長の謝罪ビデオをネットで公表したものの、実際の計画は変更せずに強気でした。ところが会員数は減少し続け、10月の末には、株価がそれまでの最高株価の1/3にまで下落してしまいました。

Netflixの料金増加には、事業コストの増加と世界に事業を拡大させる目論みがあったのですが、ここまで状況が悪化してしまうと、事業の継続自体難しくなって来るだろうし、当然の事ながら、世界進出の計画も変更せざるを得ないだろうと思います。

Bank of America、アメリカで二番目に大きな銀行が、デビットカードの使用毎に5ドルの手数料を取る事を一月程前に発表しました。カードの一回の使用毎に5ドル、日本円にして約500円の手数料というのは、かなりぼったくりのような気がします。日本でのデビットカードの浸透がどのくらいなのかは分かりませんが、アメリカでは、クレジットカードが使える所では、大抵デビットカードも使えるようになっており、スーパーで牛乳を買う時にもデビットカードを使う人が大勢います。

私はBank of Americaに口座を持っていないのですが、発表を知った顧客はかなり怒ったようで、カードを使う度に5ドルの手数料を支払いたくない為に、口座をBank of Americaから他の銀行へ移した人が少なくなかったようです。Bank of Americaのデビットカード手数料徴収の告知の後、他の銀行も足並みを揃えたようにデビットカードの手数料を発表していたのですが、10月終わりの時点で他の銀行からは手数料徴収は白紙に戻すという決定が既に出ていました。結局Bank of Americaのみが最後に取り残された形となり、Bank of Americaもとうとう11月1日に手数料を取らないという発表を出しました。

Bank of Americaは、元々アメリカ西海岸を本拠地とする銀行ですが、ここ数年の吸収合併によって急速に巨大化した銀行です。サブプライムローンの焦げ付きによって出た損失をおぎなうために多額の税金が2009年にはつぎ込まれました。その上での今回の料金増加と30,000人の大量解雇発表、銀行はBank of Americaだけではないのだから、他に乗り換えようとする人が出て当然です。

この二つの企業の例は、最近のアメリカ経済を如実に現す興味深い例だと思いました。企業は収益を増やし事業を拡大する為に、国民の収入が減少しているにも関わらず強気で料金の増加を進めようとするのですが、アメリカ国民の経済的体力は企業が分析するよりもずっと低下しているのです。企業の理事会に出席する人々は、Occupy Wall Streetの参加者が叫んでいるように、もしかしたら本当に一般人の生活の苦しさが全然分かっていないのではないかと疑ってしまいます。



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