2012年1月27日

中間層の消滅

21日付けのニューヨークタイムスに、How the U.S. Lost Out on iPhone Work という記事と今日の Average Is Over という記事は心にずっしりと重く響きました。最初の記事には、アップルは2002年頃までは、アメリカ国内で一体型のiMacを製造して "Made in the U.S.A." が売りの一つでもあったのに、現在ではiPhoneを含めた全てのアップル製品は中国などで作られています。どうしてそのような結果になったのか、という経緯がよく描かれています。

アップルが海外に生産拠点を移したのは比較的最近の事で、その分野では決して先駆者とは言えません。PCやテレビ、家電のメーカーは、もっと以前からアジアや南米での生産をしていました。工場の生産ラインは、沢山の技術者や工員を雇う大口の雇用者なので、それが海外へ移れば、当然失業者は増えるわけです。中国人はアメリカ人よりも遥かに安い値段で長時間働き、工場の隣の宿舎で寝起きし、そしてさらに企業がまさに必用としている技術を持っているのだそうです。

でも、これは何も工場などの第二次産業のみに言える事ではなく、同じ現象は第三次産業にまで既に及んでいます。ウェブサイトの制作やデザインを東欧や南米の労働力が安い地域で行うというのは、数年前から私も知っているし、カスタマーサービスも殆どがインド、フィリピン、パナマ等にあってアメリカ人が電話の向こうで答えるというのは今では稀です。様々な事務的な仕事もコンピューターが処理するようになったので、人員削減をしてより少ない安い労働力で今までと同じ事ができるようになりました。

記事にあった極めつけの挿話は、ウェイトレスの代わりに注文をとるiPadのような端末です。各テーブルに置いてあるタブレットには、メニューやカロリー、栄養分、値段が表示されるようになっており、注文も会計もそこからできるそうです。タブレットはウェイトレスのように注文を間違える事もないし、給料もチップもいらない。レストランには料理を作る人とバスボーイが数人いれば良いだけなので、経費もかなり節約できます。

要するに、そこそこの平均的な人間では、今のアメリカで仕事がないということなのです。ずば抜けて優秀であるとか、経営者であるとか、作家や芸術家のように他の人が代行不可能な個人的な特技や技術がある人以外は、失業してしまう可能性が高いのです。かつては、一つの産業が衰退しても、別の産業が台頭して来ていたので、うまい具合に失業者がすくいあげられていましたが、今回はその気配すらありません。

これが、Occupy Wall Street が始まったもう一つの側面なのだろうと思います。なぜ不況になったか、銀行の無謀なビジネスは、今回の不況の幕開けですが、金融業界を直せば景気が元にもどるというわけではないということをアメリカ人は感じています。



よかったらクリックおねがいします。 ↓こちらのクリックもおねがいします。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ

0 件のコメント:

コメントを投稿