2012年4月13日

電子書籍の談合訴訟和解

日本では、電子書籍の数自体がまだまだ少ないようですが、アメリカでは殆どとは言えないまでも、かなり多くの本が電子書籍として発売されており、私を含め既に利用している人は多いと思います。電子書籍は、もう10年位存在しているようですが、一般的になったのは2年程前にアマゾンがキンドルという電子書籍専門の端末を販売しだしてからです。その後、Kobo、Apple、Barnes and Noble (Nook) 等の様々な会社が市場に参入し、電子書籍はさらに一般化して行きました。

電子書籍自体は端末がないと読めない為に、最初に$100以上する端末を購入する必用がありますが、端末さえあれば、実際の本よりも格安の電子書籍を買う事ができるし、家が本でかさばる事もありません。

今日 class action law suit(複雑訴訟形態)という形をとり、アップルと5つの出版社が価格談合の疑いで民事訴訟されました。もともと電子書籍の小売り価格の設定は小売業者が行っていたのですが、アップルが市場に参入してからは、出版社が小売価格を設定するようになり、小売業者が自由に価格設定をできなくなったのだそうです。その裏には、アップルがiPadの発売に合わせ、それまで殆どアマゾンの独占状態にあった電子書籍のシェアを獲得する為に出版社に働きかけたのではないか(談合)という疑いがあります。出版社が電子書籍の価格を設定する事により、価格による市場競争がなくなれば、アップルの電子書籍の販売が容易になるからです。

数時間もたたないうちに、被告の5つの出版社のうちの3社は、既に和解に応じる声明を出しました。さらにその数時間後には、アマゾンが電子書籍の値段を下げるという声明も発表しています。より安く本が読めるようになるというのは、消費者としては喜ばしい事ですが、出版業界及び本のあり方が近い将来さらに大きく変わって行く事になりそうです。

アメリカの出版業界や書籍小売業者は、30年前と比べて既に大きく異なっています。それまでは、各地に点在していた独立した書店が今では大手の Barnes and Noble という本のチェーン店にとって変わっています。Barnes and Noble は、独立した書店よりも品揃えが良いのと広い店内にスターバックスを置いているために集客能力が高く、コーヒーを飲みながら座って本を読めるため、より長く客を店内に留めておくことで大いに成功しました。ところが Barnes and Noble は、電子書籍の販売では少々出遅れ、今では Nook という端末を販売しているものの、シェアはあまり大きくないようです。

これから電子書籍がさらに一般的になると、書店が姿を消すのではないかという懸念を持つ人もいるようです。今まで小さな書店を駆逐し続けた Barnes and Noble も今度はアマゾンに駆逐される日が来るのかも知れません。

本当に本屋が無くなるのかどうかは、私には予測しかねますが、このような経済の変化は恒常的なもので、良い悪いに関わらず決して止める事のできない流れだと思います。技術が進み新しい何かが出て来る度に、古いものは徐々に姿を消して行くものなのでしょう。インターネットに代わる媒体が近い将来出て来たとしても、全く驚くに値しません。

町工場への大手企業からの発注が全て中国へ流れてしまったり、会社がそれまでの従業員を解雇してあらたに契約社員ばかりを雇うようになったのも全て同様の事が違う業界で起っているだけです。生活が便利になった、物が安くなったと喜んでいると、今度は自分の足元をすくわれてしまうのです。

だからと言って、田舎で農業を始めて自給自足の生活に入ろうという気持ちはありません。農業も魅力的ではありますが、私の天職ではなさそうです。ただ、自分の回りや世界で何が起きているのかを知り、どうやったらこれからの世の中を生き残る事ができるのかを考えるのは、かつてないほど大切になってきたと思います。



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