2012年4月22日

イコンとアイコン

アンドレイ・ルブリョフ 聖三位一体
20代の頃、イコンにとても惹かれていた時期がありました。イコンは、キリストや使徒、聖人、聖書の中の登場人物を板の上に描いたもので、東方教会では古くから礼拝の為に使われていました。多くはテンペラという技法をつかっており、金や銀をつかって装飾してあるものも少なくありません。

何故私がイコンに惹かれたかは、イコンが私のそれまで知っていた絵画と全く異なるものだったからだろうと思います。視覚的な遠近法を使っていないので、慣れない目にはイコンの中に描かれているテーブルが不安定に見えたり、聖像の描き方が稚拙に見えたりしますが、何故そのように描かれているかには、全て理由があるのです。

イコンは制作自体が祈りの作業です。イコン画家(おそらく殆どは修道士)が細い筆を使って少しずつ行うので、かなり長い時間がかかります。絵の巧さよりも信仰の深さがイコンの出来を決めるというのも面白いところです。

私は当時、気合いが入りすぎて、千葉県にある修道院にまでイコンの制作を習いに行きました。その時に制作したパントクラトールは、今でも大切にとってあります。全て古典的な方法と画材で、有名なイコンを模写したのですが、私の描いたキリストがセクシーであるという指摘を修道女の先生から受けました。いくらイコンに興味を持っていたとは言え、修道生活に入ろうなどとは全く考えていなかったので、己の俗の部分が反影してしまったのだろうと思います。

そして今、パーソナルコンピューターが使われる時代になって、アイコンと呼ばれる小さなデスクトップ上のデザインが沢山使われるようになりました。日本語ではイコンとアイコンは異なって発音されますが、英語ではどちらも 'icon' で全く同じです。ロゴも視覚的な会社のアイコン(イコン)です。つまり、ロゴの形や色には、何故そのようになっているかの明確な意味があり、デザイナーはその会社の業務内容や特徴などを理解していなけらばならないのです。綺麗に見えるだけでは、役を果たせないのがロゴです。



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