2012年12月18日

銃規制と精神科医療への僅かな希望

おそらく、今回の小学校での銃撃事件は、銃による犯罪に鈍感になってしまったアメリカ人にとっても衝撃的だったのでしょう。20人もの小学校1年生が殺され、無事だった子供達もその場を目撃しなければならなかったというのは、惨すぎます。

今までかたくなに銃規制に反対していた議員達が、一人二人と意見を変えて来ています。全米で最も強大な圧力団体と言われている全米ライフル協会は、今の所黙ったままです。かねてから銃規制を呼びかけていたニューヨークのブルームバーグ市長は、この機会をつかんで国家レベルでの銃規制法案を通過させようと活発に動き回っています。

私は、アメリカの銃政治に飽き飽きしていますが、もしかしたら今回ばかりは今までと違うかもしれないと僅かながら希望と期待を持って状況を見守っています。例え銃規制が一時の流行のようなものでしかなくても、法案を成立させる事ができるのならば、それはそれで意味があります。

また、銃規制と同時にアメリカで精神科医療を多くの人の手が届くものにする事も重要です。犯人の精神状態や家庭の崩壊、人間関係の希薄さに全ての責任を被せるつもりは全くありませんが、犯人が特殊な精神状況にあったのは事実のようです。銃撃犯人アダム・ランザは、アスペルガーだったと言われています。

アスペルガーは高機能の自閉症で、非常に高い知能指数を持っていながら他人との関係を築く事ができません。パッと見た目は普通な場合が多いのですが、同じクラスにアスペルガーの子供がいれば、クラスメートはその違いに気がつきます。アスペルガーを持つ人は、虐められたりして被害者になるケースは多いものの、事件の加害者になるのは極めて稀です。

犯人の母親は数年前に離婚した前夫から年間2千万円以上にも及ぶ生活費と養育費、及び健康保健を受け取っていたようです。裕福な地域にある大きな家で息子に家庭教育を与えながら二人で住んでいましたが、その母親が第一番目の被害者となりました。もしも犯人が精神科やセラピストに通っていたならば、そこから犯人の動機や精神状態が分かって来るかも知れません。

アメリカの健康保健は精神疾患の治療をカバーしない事が多く、保険の一部負担がなければ精神科の医師やセラピストの費用は全て各自が支払わなければなりません。精神科の医療はかなり高額な場合が殆どなので、精神科の治療を受けたくても受けられない人びとは沢山います。

精神分裂症のような深刻な精神疾患でなくても、たとえばパニック症候群や鬱病などのよくある病気でも診療を受ける事ができなければ悪化する事は目に見えています。アメリカのホームレスの半数以上は何らかの精神疾患を負っているというデータもあります。

被害者やその家族に対する追悼の言葉も、同じ事を繰り返さないという確固とした覚悟と約束がなければ、ただ空しく響くのみです。銃に対する何らかの規制を行い、精神科の医療を一般の人びとが受けられるようにする事こそが、本当の意味での被害者の追悼になるのだろうと思います。



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2 件のコメント:

  1. アメリカだと、ドラマや映画でやたらにセラピー受けてるイメージあったけど、医療費高いんだ。
    精神疾患は表に出にくいことが多いから事件に発展すると恐ろしい…

    今回の小学校の事件がきっかけで本当に銃規制に向けて政府が動いて欲しいね

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  2. アメリカの医療費はそもそも高いんですが、精神科医療は特に高いんですよ。今日もオバマ大統領が記者会見の時に「何らかの銃規制をすると同時に、精神科医療も銃と同じくらい手が届くようにする。」と言ってました。

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