2011年11月2日

庶民の怒り

アメリカにはNetflixという、映画のストリーミング配信と郵便によるDVDレンタルを行っている会社があります。私もそこの会員です。今年の夏頃、今まで一つのサービスだったストリーミング配信とレンタルを分けて別会社、別料金にするという告知がありました。値段も今までの倍近くなります。

会員は、怒ってNetflixをボイコットし始めました。わたしは、DVDレンタルをあきらめ、ストリーミング配信のみの会員に変更しました。それでも、Netflixはやって行けると読んだのでしょう。社長の謝罪ビデオをネットで公表したものの、実際の計画は変更せずに強気でした。ところが会員数は減少し続け、10月の末には、株価がそれまでの最高株価の1/3にまで下落してしまいました。

Netflixの料金増加には、事業コストの増加と世界に事業を拡大させる目論みがあったのですが、ここまで状況が悪化してしまうと、事業の継続自体難しくなって来るだろうし、当然の事ながら、世界進出の計画も変更せざるを得ないだろうと思います。

Bank of America、アメリカで二番目に大きな銀行が、デビットカードの使用毎に5ドルの手数料を取る事を一月程前に発表しました。カードの一回の使用毎に5ドル、日本円にして約500円の手数料というのは、かなりぼったくりのような気がします。日本でのデビットカードの浸透がどのくらいなのかは分かりませんが、アメリカでは、クレジットカードが使える所では、大抵デビットカードも使えるようになっており、スーパーで牛乳を買う時にもデビットカードを使う人が大勢います。

私はBank of Americaに口座を持っていないのですが、発表を知った顧客はかなり怒ったようで、カードを使う度に5ドルの手数料を支払いたくない為に、口座をBank of Americaから他の銀行へ移した人が少なくなかったようです。Bank of Americaのデビットカード手数料徴収の告知の後、他の銀行も足並みを揃えたようにデビットカードの手数料を発表していたのですが、10月終わりの時点で他の銀行からは手数料徴収は白紙に戻すという決定が既に出ていました。結局Bank of Americaのみが最後に取り残された形となり、Bank of Americaもとうとう11月1日に手数料を取らないという発表を出しました。

Bank of Americaは、元々アメリカ西海岸を本拠地とする銀行ですが、ここ数年の吸収合併によって急速に巨大化した銀行です。サブプライムローンの焦げ付きによって出た損失をおぎなうために多額の税金が2009年にはつぎ込まれました。その上での今回の料金増加と30,000人の大量解雇発表、銀行はBank of Americaだけではないのだから、他に乗り換えようとする人が出て当然です。

この二つの企業の例は、最近のアメリカ経済を如実に現す興味深い例だと思いました。企業は収益を増やし事業を拡大する為に、国民の収入が減少しているにも関わらず強気で料金の増加を進めようとするのですが、アメリカ国民の経済的体力は企業が分析するよりもずっと低下しているのです。企業の理事会に出席する人々は、Occupy Wall Streetの参加者が叫んでいるように、もしかしたら本当に一般人の生活の苦しさが全然分かっていないのではないかと疑ってしまいます。



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