2012年8月24日

アメリカの修道女達

ここ数年アメリカのキリスト教右派グループがダーウィンの進化論を学校で教える事に反対したり、人工妊娠中絶や避妊を法的に禁止しようとしていますが、それとは異なる方向に進んでいる聖職者達がいます。カトリックの修道女達です。

ここ数十年の間、アメリカで神に一生を捧げたいと思う女性は少なく、修道女達の平均年齢はかなり高くなっています。それでも、精力的に学校で教鞭を取ったり、貧しい人々に仕えたりと、彼女達の多くは一般の人々の中で神の慈しみを体現しています。マザーテレサのような活動をしている人は、実は世の中に沢山いるのです。

ところが、彼女達の精力的な社会福祉活動をバチカンは快く思わないようで、アメリカに於ける修道女の最大グループ Leadership Conference of Women Religious は過激なフェミニズムを提唱しているとして今年の4月からその方向修正を迫られています。堕胎禁止や同性愛婚禁止を唱える司教の後押しをすることよりも社会福祉により熱心であるというのが罪状のようです。

多くのアメリカ人は修道女達に同情しています。修道女の優しさや誠実さに触れた経験のある人は多いし、毎週教会に通う人々の中にも、例外を許さない厳しい堕胎禁止や避妊禁止は行き過ぎであると感じる人が多いからです。

昔イコンを教えてくれたシスターから、歴史が移り変わるにつれて、イコンに描かれるキリストの顔の表情が大きく変化するという興味深い話を聞いた事があります。イコンの作者が、神は堕落した時代に怒りを感じていると思えばキリストの顔は怒りを帯びた厳しいものとなり、逆に苦しい時代には人の心をなぐさめるように慈悲の表情をもったキリストの顔が描かれるのだそうです。

おそらく、バチカンや司教にとってのアメリカは快楽に満ちて堕落した社会なのだろうと思います。でも人々の中で活動する修道女達はアメリカ社会の低辺で苦渋に満ちた生活を送る人々を沢山見ています。アメリカ社会で貧富の差が大きくなればなるほど、現状の把握に関する認識も人によって大きく異なって来るのだろうかと思います。

いままでに何度かバチカンからの公式質問状にどうやって返答するかをまとめる会議が開かれましたが、今のところ修道女達は大人しく引き下がる様子を見せていません。



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