2012年2月10日

家族計画

日本とアメリカを含めた諸外国の大きな違いのひとつに、宗教が社会全体や政治に及ぼす影響の大きさがあります。日本には神道があり、儒教道徳があり、アニミズムもありますが、どれも政治に影響を及ぼすほどの強大な組織力は持ち合わせていません。それに対して、一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の信奉者が多い国々では、宗教は選挙を左右する政治的な力になり得ます。日本での唯一の組織的な力を持つ宗教団体としての例外は創価学会ですが、それでもその影響力は諸外国での一神教の影響力に比べるとはるかに微弱です。

キリスト教とイスラム教は、ユダヤ教から派生している為に、それぞれの宗教では崇拝の仕方こそ異なるものの、同一単一の神を崇拝しています。3つの宗教は、歴史的に敵対しあったりしているので、全く別のもののように見えますが、その内容を見ると根本的には多くの共通点があるのです。

その共通点の一つが家族計画の否定、つまり避妊と中絶の禁止です。日本で女子高校生が妊娠してしまった場合、殆どが中絶の選択をとりますが、アメリカでは出産の選択がかなり多いのです。未婚で母になることが受入れられやすい、養子縁組の制度が整っているという事もありますが、それは宗教的理由から中絶を忌避する環境が背景にあるからだと思います。

前副大統領候補のサラ・ペイリンは、妊娠中から胎児にダウン症があると承知の上であえて出産したし、自分の高校生の娘が妊娠してしまった時にも中絶せずに出産させました。そのような生命を重んじる姿勢は、キリスト教保守派の支持を受けました。

それでは、例えば欧米でキリスト教を信仰している人達は、妊娠や出産をすべて自然に任せているのかといえば、事実はそれとは大きく異なります。現実的に見て、女性が20代で結婚し、何の避妊方法もとらずに自然に任せれば、8人の子どもができてしまうことも珍しくないと思います。日本でも戦前はそれが普通でした。アメリカでも、アーミッシュやユダヤ教のオーソドックス派に属していて、閉ざされた社会で生活している限られた人々は、今でも子沢山です。

ところが、一般家庭で子どもが5人いるというのは、ごくごく稀です。大抵の家庭では、二人。裕福な家庭や南米系の家庭で3人ぐらいが平均だろうと思います。つまり、どのような宗教に属していても、例え宗教が家族計画を禁止していても、アメリカの女性の殆どは密かになんらかの避妊をしているのです。

ここ数日、人工妊娠中絶や避妊の問題が政治的問題としてニュースで扱われています。今年の11月に次の大統領選を控えている為に、共和党も民主党も様々な方法で得票数を稼ぐ事に必死になっています。共和党は、中絶手術の全面廃止を唱えて、キリスト教関係の得票数を伸ばそうとしています。民主党は、全ての希望する女性が無料で経口避妊薬を得られるようにして、女性票を伸ばそうとしています。



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