2012年2月20日

アメリカのデモグラフィック

スーパーチューズデー(超火曜日)という共和党の大統領候補を選ぶ重要な日が近づいています。今回の共和党の大統領候補は、これと言ったスーパースターがいるわけではなく、かといって前回の民主党候補選の時のような二候補が激しく争うような構図でもなく、盛り上がりに欠けています。それは、いまいち魅力的になれない候補者側の問題であり、共和党自体が支持層を失っているわけではないようです。事実、アメリカは近年どんどん保守的になっています。

それぞれの国の保守派が何を保持しようとしているのかは、国によってずいぶん異なります。アメリカの保守的な考え方には、財政保守と社会保守の二つがあります。財政保守の考え方は、社会保障などに使う支出を極力削り、税率を低くする事によって、国の財政のバランスをとろうとするものです。一方、社会保守の考え方は、社会的なモラルを同性愛反対、同性婚反対、キリスト教、産児制限反対、人工妊娠中絶反対などの立場から守ろうとするものです。

どちらも低所得者には不利な理念なのですが、アメリカの共和党は低所得者層に幅広い支持があります。ここ数年の不況や高齢化の影響で、年金、高齢者用医療保険、食費援助、低所得者用医療保険など、何らかの社会保障を国から受けている人の数は急増したのですが、その援助を国から受けている人々こそ、国の社会保障に反対しているのです。

不可解にも見えるこの現象は、教育のフィルターをかけると説明がつくというのが、先日のニューヨークタイムスにあった記事です。つまり、大卒を含む学歴が高い人ほど民主党を支持する傾向にあり、南部の貧困がはびこる地域では、民主党は都会に住む高学歴の政党と見られているようです。

何故このようなねじれた状態になったのかには、いくつかの理由があります。第一には、社会保障の恩恵を受けている人が社会保障を受けているという自覚がない事。多くのアメリカ人は、年金や高齢者用医療保険が社会保障の一つだということを認識していません。第二に、ブッシュ前大統領が、自分は南部(テキサス)出身の庶民派であるという印象を植え付ける事に成功した事があります。実際には北部出身のブッシュ前大統領がテキサスに移ったのは成人してからで、テキサス訛も後で習得したものです。ブッシュ一族もサウジアラビアの王族と家族ぐるみの付き合いをする程の資産家なのですが、南部の人びとはブッシュ前大統領の話し方や振る舞いに大きな親しみを持ち、自分と同じ価値観を持つ大統領だと感じました。第三には、人々の記憶の中で60年代の市民権運動が遠い過去のものとなってしまった事があると思います。

ブッシュ前大統領の頃から、アメリカでは政治的、社会的な二極分解が進んでいます。貧富の差は更に広がり、教育格差も大きくなり、共和党と民主党は相容れず、議会で何一つ可決できないような事態が続きました。現在のアメリカは、他の先進国よりも Social Mobility が低いと言われています。つまり、貧困家庭に生まれた子どもは、将来そこから抜け出して中流の生活ができるようになる可能性が極めて低いということです。

おそらく、次の大統領選挙で、アメリカが更に保守化していくか、それとも中道に戻るか、もうすこしはっきりと見えて来ると思います。



よかったらクリックおねがいします。 ↓こちらのクリックもおねがいします。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ

0 件のコメント:

コメントを投稿