2012年3月29日

アメリカの宗教

 In God We Trust
アメリカの紙幣にも最高裁判所の壁や台座にも刻印してあるのを見ます。これを見る度に、アメリカの建国精神には、キリスト教の神の理念が重要な位地を占めていた事を考えさせられます。この God は、一般的な神ではなく、一神教の神を指しています。現在のアメリカは、世界各国からの移民で構成されているので、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の一神教信者の他にも、仏教、ヒンズー教の人、また無宗教の人も住んでいます。それなのに、いまだに何かにつけて一神教の神を持ち出すのは、政教分離の精神に反すると思うのですが、それをあまりとやかく言う人はありません。

元々アメリカはイングランド国教会と相容れなかったピューリタンが新天地を求めて次々と入植して広がった植民地です。ピューリタンは、遊興や子づくり目的以外の性交渉を一切禁止するような厳格な宗派だったそうです。時代が進むにつれて、ピューリタン以外の移民も入って来て、今ではピューリタンと呼ばれる宗派すら聞きませんが、その快楽に対して厳格な精神は今でもアメリカに生きていると書いたら、多くの人は驚くと思います。アメリカは、主に自由の国、快楽の国、フリーセックスの国、女性の権利が強い国と思われがちですが、その一方でヨーロッパの各国よりも生活全般に及ぶ宗教の影響が強い事は、あまり知られていないかも知れません。

人工妊娠中絶を法的に全廃しようとしているグループも、厳格なキリスト教の思想を持つ団体(主にアメリカ南部に住むキリスト教右派、主に福音派の人々)です。かつての禁酒法もキリスト教団体によって持ち出された法律だし、いまでも週末にアルコール類の販売を禁止している州は南部を中心に存在します。

アメリカではイスラム教徒の数も急速に伸びています。モハメッド・アリのようにそれまではキリスト教徒だった黒人が、イスラム教に改宗し、名前もイスラム風に変えるというのは珍しくありません。中東やアジアからのイスラム系の移民も多く、私が住んでいる地域でもハラル・ミートは簡単に手に入ります。

他にも、ユダヤ人は昔から独特の文化を守り続けているし、南米からの移民の増加によってカトリックはどんどん信者を増やしています。仏教も少ないですが、都市部を中心に若い人々の関心を集めています。ただ、アメリカ人が仏教徒になると、実際にお経をあげたり、座禅を組んだりと、信仰の為の行為を必ず行うので、日本の葬式仏教のように普段は何もしない仏教とは少々異なります。つまり、何も信仰がない、無宗教であるということの方が、アメリカでは稀なのです。

アメリカで大学に通っていた頃、講師が「信仰なしで、人は幸せになれるのか」という質問をしました。殆どの生徒の答えはノーでした。人の幸福感は信仰と深く結びついている、信仰がなければ幸せとはいえないというのが理由です。ところが逆に多くの日本人には、何故幸せになることと信仰が関係あるのか理解できないだろうと思います。日本は、宗教が不在の世界的に見てもとても珍しい国なのです。



よかったらクリックおねがいします。 ↓こちらのクリックもおねがいします。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 海外生活ブログ ニューヨーク情報へ

0 件のコメント:

コメントを投稿