2011年10月1日

その道のプロ

曾祖父の古い白黒写真を発見した事は、少し前に書いたのですが、その写真の一枚にはおばあばも写っていました。宴会場らしき所で、70代ぐらいの曾祖父が立ってなにか面白い事を喋っているようで、その一歩下がったところに笑っている40代ぐらいのおばあばが立っています。

曾祖父は、かなり話術の達者な人だったそうで、顔剃りをしている間に、いつも必ずちょっとした話をしてお客さんを楽しませたそうです。剃刀の当たり方も、羽で顔をなでられているように軽やかで気持ちがいいので、話に引き込まれながら剃刀の感触を楽しんでいるとほどなくして「ハイ、終わったよ。」と言われるのだそうです。剃り終わった後の顔は、この上なくすべらかだったと聞きます。

写真の中のおばあばは、芸者さんっぽい刺繍の入った着物をきているのですが、あんなに華やかなおばあばを今まで見た事がありませんでした。それよりも驚いたのは、そのたたずまい方や笑い方が、自分を見せるためのものではなくて、曾祖父を引き立てるためのものだというのが見てとれるのです。
「私の連れ合いは、こんなにおもしろおかしい話をするんですよ。どうぞお楽しみ下さい。」
という声が聞こえて来そうなのです。

今まで、芸者というのがどういう仕事なのかあまりよく分からなかったのですが、その写真一枚で芸者が何なのか分かったような気がします。お客様を楽しませる、宴席のプロなんですね。そして、立ち方一つでそれを表現してしまうおばあばは、良い芸者さんだったのだろうと思いました。



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