2011年9月18日

おんくろだなううんじゃく

望郷のニューヨーカー 祖母は若い時には苦労したようですが、50才ぐらいから隠居生活を満喫しはじめる事ができました。家の商売は私の両親が切り盛りしていたし、祖父が戦死したために恩給が出ていたので、元気な頃は、国内外問わずあちこち旅行へ行ったりお参りに行ったりしていました。その中でも、とりわけ祖母が情熱を注いでいたのがお遍路さんです。

白木の杖を持ち、真っ白な浴衣を羽織って四国八十八箇所などの霊場を巡っては、それぞれの寺院の判子をその浴衣に押してもらうのだそうです。丁度、今で言うスタンプラリーです。「六根清浄、六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱えながら巡るのだと教えてくれました。

その巡礼先で買って来たらしいお札のひとつに、祖母曰く「便所の神様」というのがありました。とても怖い憤怒の形相をして炎を背負ったインドの神様みたいなのが、A4サイズぐらいの紙に印刷してあるのです。祖母は、これを便器の真っ正面に貼付けました。

座ると嫌でも恐ろしい形相が目に入り、特に夜中は怖いので、お願いだから取り外して欲しいと頼んでも、あれはずっと自分で用が足せるように守ってくれる神様なんだから何も怖い事はない、と言って外してくれませんでした。何年間もずっとトイレのドアに貼ってあったので、書いてあった「おんくろだなううんじゃく」という呪文も烏枢沙魔明王(うすさまみょうおう)という名も脳裏に焼き付いて離れなくなってしまいました。

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